読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

マイナンバー制度をがっつり勉強する

マイナンバー制度の概要、そして詳細を理解することを目的としたブログです。

イギリスで廃止された「国民ID制度」とは?

世界のマイナンバー制度の現状

f:id:marrige130110:20160330122157j:plain

前回は韓国のマイナンバー制度「住民登録番号」について紹介しました。

mynumber.hatenadiary.jp

今回紹介するのはイギリスです。実はイギリスでは2006年にマイナンバー制に近しい国民ID制度が開始されますが、その後わずか5年で方針転換されて、制度が廃止されることになります。それまでに利用していたIDカードや登録簿などの個人情報はすべて廃棄されたそうです。いったい、イギリスのマイナンバー制度で何が起きたのか、廃止の理由はなんだったのか、見てみたいと思います。

 

国民ID制度の概要

まずは行われていた国民ID制度がどのようなものだったかを紹介します。大まかに言えば、日本や他国で行われている制度と目的や内容は大きな違いはありません。やはり公共サービスにおける手続きの効率化、また国民の利便性向上と言ったところです。各人の個人情報をイギリス政府が管理する英国ID登録簿(NIR)に集約して、個人IDカードによって、それらを利用してたのです。

日本と違うところとしては、やはり不法移民やテロリスト、犯罪意識への対応です。日本ではこうした問題を身近に感じることはまだ多くありませんが、もはや欧米諸国はテロが身近なものとしてあります。テロの発生を防ぐために入口のセキュリティを強化、事前に取り締まるというのも大きな目的でした。

2016年3月にはイギリスからも遠くはないベルギーで大規模なテロがありました。また、パリでのテロもまだまだ記憶に新しいでしょう。ヨーロッパ諸国が移民に敏感になるのも当然というものです。そうした側面もあり、イギリスのID制度も公的サービスの効率化よりも、テロ防止という意味合いのほうが強かったのかもしれません。

 

人権侵害という反発の声

そのような背景で始まった国民ID制度でしたが、開始以前から懸念されていたのが人権侵害という問題です。日本でもマイナンバー制度の法案が衆議院で審議入りしたころから、弁護士団体・婦人団体・文化人・芸能人の多くがマイナンバーに反対していました。クリス松村さんや尾木ママ、坂上忍さんなんかはメディアでも発言して取り上げられていたようです。

こうした声がイギリスでもあったわけです。そして、実際に運用が行われた5年間のあいだでそうした声が大きくなったということでしょう。マイナンバー制度は、国家により情報を統制されることで、自分たちの自由・人権が侵害されるということを、イギリス国民の多くが感じたということです。2016年1月から開始されたマイナンバーですが、日本でも同様の事態が起きるのかどうか、その点は注視しなければならないでしょう。

政権交代によって制度の廃止へ

ちなみに、上述のように一度は国政で決定された制度が覆された背景には、政権交代がありました。2006年当時に国民ID制度が成立した時の与党は労働党でしたが、それが2010年の総選挙で敗北することになるのです。13年ぶりの政権交代でした。保守・自民党の連立政権はもともと公約で国民ID制度の廃止を掲げており、公約通りになったというわけです。それほどまでに、潜在的な反対層がいたということですね。

とはいえ、一度は始まった制度がこうして廃止されるというのは、近代の政治においても非常に珍しい事例です。廃止後、英国ID登録簿(NIR)のデータは2011年2月までにすべて破棄されることになりました。その労力たるやすさまじいものだったと思います。日本においても、政府、企業、国民にすでに浸透しつつあるマイナンバーが、急になくなるなんてことになれば、様々な点でとんでもない労力がかかるはずです。

しかしながら、それをやりきった点にイギリスという国における民主主義の強さを感じざるをえません。マイナンバーのみならず、こうした国民の政治参加への姿勢というのは、日本は参考にするべきところがあるかもしれません。

 

 

以上、イギリスのマイナンバー制度、「国民ID制度」についてでした。お読みいただきありがとうございました。